迷ったらココだけ:この記事の結論
- AI → 仕事を奪うより、検査を速く・楽にする方向で使われている
- 飽和 → こちらのほうが給料や採用に効いてくる。備えるならこっち
- 備え方 → 転職しなくても、自分の「相場」を知っておく
「放射線技師はAIに仕事を取られる」「技師はもう余っている」。そんな話を見るたびに、昇給も少ないのにこの先どうなるのか、と不安になりませんか。今の職場に残るか辞めるか迷っているなら、なおさらだと思います。
先に結論を書くと、私はAIで技師の仕事がなくなるとは考えていません。怖いのはAIより「飽和」のほうです。AIは検査を速くする道具として入ってきていて、技師が余っていることのほうが、給料や採用に効いているように感じます。
現役の診療放射線技師(10年目)のアルです。転職活動の見学先で、AIを搭載したCTやMRIを実際に見てきました。この記事では①AIが技師の仕事をどう変えているか、②飽和の中で感じていること、③今のうちにやっておきたい備え、を順に話します。
「放射線技師はなくなる」不安の正体は、AIと飽和の2つ
「放射線技師はなくなる」という話には、2つの不安が混ざっています。1つはAIが画像を作ったり判断したりして、技師がいらなくなるという不安。もう1つは技師の数が多すぎて、仕事や給料の取り合いになるという不安です。
この2つは、影響の出方がまったく違います。ひとまとめにすると、何に備えればいいのかが見えなくなるんです。
AIは仕事を奪うのか:すでにAI搭載のCT・MRIは出ている
AIは、もう未来の話ではありません。CTでは、ディープラーニング(≒AIの学習方法の一つ)で設計した画像再構成の技術を載せた装置が、2018年に、世界に先がけて日本で販売が始まっています。
MRIでも、AIを使った画像の作り方で撮影時間を短くしたり、撮影の操作を簡単にしたりする装置が、承認を受けて販売されています。
私の職場ではまだ使っていませんが、勉強会や、転職活動で見学・面接に行った病院で、AIを搭載した装置を見てきました。見て感じたのは、AIは技師を置き換えるものではなく、作業を効率化するための道具だということです。
振り返ると、この10年で大きく変わったのは技師の仕事の中身より、装置の性能のほうでした。画像がきれいになり、検査が速くなっても、患者さんを検査室に案内して撮影するのは、今も技師の仕事です。
AIに任せられないのは、患者さんの案内と責任
正直に書くと、AIの装置を自分で使ったことがないので、「この場面はAIには無理」と具体的に言える段階ではありません。それでも私が「なくなる」と不安にならないのは、患者さんを案内するのも、撮影のポジショニングや被ばく管理に責任を持つのも、技師だからです。
AIの位置づけについては、厚生労働省が2018年12月の通知で考え方を示しています。AIを使った診断の支援があっても、診断や治療をする主体は医師で、最終的な判断の責任も医師が負う、という整理です。
この通知は医師についてのもの。ただ、AIが人の判断を支える道具として扱われている点は、技師の現場でも変わらないはずです。
装置がどれだけ賢くなっても、「この撮影で大丈夫か」に責任を持つのは人です。そこはAIに渡せない部分だと思います。
任される仕事は増えたのに、給料は横ばい
AIで仕事が減るどころか、法律の上では技師が担当できる仕事が広がっています。2021年10月に施行された法改正で、造影剤を入れるための静脈路の確保や、RI検査で放射性医薬品を投与する装置の接続・操作などが、技師の業務に加わりました。
2021年10月の法改正で加わった主な業務
- 造影剤注入装置をつなぐための静脈路の確保
- RI検査で放射性医薬品を投与する装置の接続・操作
- 上部消化管検査で、鼻から入れたカテーテルを使った造影剤の注入
- 乳がんの集団検診で、医師が立ち会わないマンモグラフィ撮影
出典:厚生労働省 医政局長通知(2021年7月9日・医政発0709第7号)
2024年4月より前に免許を取った技師などは、追加された業務を行う前に、国が指定する研修(告示研修)を受ける必要があります。
ところが、給料はそれに見合って上がっているとは言えません。国の賃金の調査では、診療放射線技師の平均年収(毎月の給与×12+賞与で計算)は2020年の約549万円に対して、2025年は約557万円。任される仕事が広がった5年間で、年収は約8万円しか増えていません。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2020年・2025年、10人以上の事業所・男女計)。
本当に怖いのは「飽和」:数字で見る技師の数
給料が伸びない理由の一つとして、私が気にしているのが技師の数です。2026年2月の第78回国家試験では、2,670人が合格しました(合格率76.2%)。
| 項目 | 2014年 | 2023年 |
|---|---|---|
| 病院で働く技師(常勤換算) | 約42,300人 | 約46,800人 |
| 診療所で働く技師(常勤換算) | 約8,700人 | 約11,200人 |
| 合計 | 約51,000人 | 約58,000人 |
出典:厚生労働省「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(2014年・2023年)。常勤換算は、パートなどの勤務時間をフルタイム何人分かに直した数です。
働く技師は、常勤換算で、9年で約14%増えました。厚生労働科学研究(令和3年度)の推計では、技師の数はこの先も増える一方、技師の需要は2030年度ごろから減っていくと見込まれています。
この数字を読むときの注意
- 人数は常勤換算で、実際に働いている人の数とは一致しない
- 国の研究班の数字は推計で、将来を約束するものではない
- 全国の合計なので、地域や施設ごとの差は見えない
ただ、人が足りない地域や施設もあり、全国どこでも同じように余っているわけではありません。
飽和の中で感じること:経験が給料に反映されにくい
私が飽和を実感するのは、技師が安く買い叩かれている気がするときです。
転職活動で感じたのは、経験年数から見た即戦力としての評価より、人件費を気にする空気でした。経験の長い人ほど給料も高くなるので、採用する側がそこを気にしているのでは、と感じる場面があったんです。
それに加えて、求人の給料がなかなか上がらないこと、働き続けても昇給が少ないことも、そう感じる理由です。
経験を積めば自然に評価される、とは限りません。人が余っている間は、自分の値段を自分で知っておく必要があると思っています。
給料そのものの話は、放射線技師の年収のリアルで詳しく書いています。
飽和の時代に、最低限身につけておきたい技術
後輩に「この先どうしたらいい?」と聞かれたら、私はAIが広がり、技師も余っているからこそ、最低限の技術は身につけておいたほうがいいと答えます。
最低限の技術とは、たとえば次のようなものです。
- 体格や痛みに合わせて、ポジショニングを調整できる
- CTやMRIなど、複数の検査を担当できる
- 被ばく管理の考え方を、患者さんに自分の言葉で説明できる
どれも、AIを搭載した装置が入っても技師に残る部分です。経験年数の長い人なら、すでに当てはまる項目が多いはず。その場合は、自分ができることを相手に伝わる形で説明できるかが次の課題になります。資格で示す方法は、放射線技師の認定資格は意味があるかにまとめました。
転職しなくても、自分の「相場」は知っておく
飽和の時代に一番困るのは、自分の給料が高いのか安いのか分からないまま働き続けること。相場(同じ条件の技師が、だいたいいくらもらっているか)を知っていれば、今の職場に残るにしても、動くにしても判断の材料になります。
同じ地域・同じくらいの経験年数・同じ検査を担当する技師の求人で、基本給と手当がいくらかを見ます。3〜5件でも、自分の立ち位置はつかめるはずです。
一般撮影、CT、MRI、透視、当直の有無など、自分ができることを一覧にします。求人の条件と並べると、評価されやすい経験が見えてきます。
転職サービスの中には、登録しなくても求人を見られるところもあるんです。まずは公開求人で相場をつかみ、条件の良い求人が見つかったら、登録して担当者に給料の幅や職場の様子を詳しく聞く、という順番で十分です。
どの転職サービスを使うかは、放射線技師の転職サイトの比較で、公開求人で相場をつかむ使い方も含めて2社に絞って紹介しています。病院以外の働き方も知りたい人は、放射線技師からの転職先も読んでみてください。
よくある質問
- 放射線技師はAIで本当になくならないのですか?
-
10年先のことを断言はできません。ただ、患者さんの案内やポジショニング、被ばく管理の責任は人が担う部分で、AIは今のところ検査を支える役割にとどまっています。
- 放射線技師は飽和しているのですか?
-
働く技師の数は増え続けていますが、地域や施設によって違いがあり、人が足りないところもあります。
- 経験が長いと転職で不利になりますか?
-
不利になるとは限りません。ただ、給料が高くなる分、採用する側がコストを気にする場面はあると感じています。担当できる検査の幅を具体的に示せるようにしておくと安心です。
- 転職する気がなくても、転職サービスに登録していいですか?
-
転職の時期がまったく決まっていないなら、まずは登録せずに見られる公開求人で相場をつかむだけでも十分です。気になる求人が出てきた段階で登録を考えれば構いません。
まとめ:AIより飽和に備えて、自分の相場を知っておこう
AIに技師の仕事を奪われる心配は、今のところ小さいと私は見ています。AIは検査を支える道具として入ってきていて、患者さんの案内と撮影の責任は技師に残ります。
- AI搭載のCTやMRIはすでにあるが、技師を置き換えるより検査を速く・楽にする方向で使われている
- 2021年の法改正で技師が担当できる仕事は広がったのに、年収は5年でほとんど伸びていない
- 本当に効いてくるのは飽和。経験が給料に反映されにくいと感じる場面がある
- 備えは、最低限の技術と、転職しなくても自分の相場を知っておくこと
昇給が少ないと感じているなら、まずは求人票で同じ条件の給料を見るところから始めてみてください。公開求人で相場を見られる転職サービスは、放射線技師の転職サイトの比較で紹介しています。









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