「放射線技師 医療機器メーカー 転職」と調べると、知恵袋には「異業種への転職は厳しい」「やるなら若いうちに」という答えが並びます。それを読んで、そっと検索を閉じた人もいるはずです。
ただ、病院に10年いる側から見える景色は少し違います。医療機器メーカーは、技師にとって「まったくの異業種」ではありません。毎日顔を合わせ、同じ装置の話をしている相手だからです。
現役の診療放射線技師(10年目)のアルです。この記事では、私が実際に見聞きした範囲だけを書きます。わかることは3つです。①メーカーの方から聞いた採用の実情、②私のところに実際に届いたスカウトの中身、③専門卒の私に「大卒以上」の求人からオファーが届いた話。
先に結論だけ
- 技師が入れるのは主に営業・アプリケーション・サービスの3つ。道は閉じていません。私の周りでは2人が移り、2人とも続いています
- 技師の経歴には、企業側から声がかかることがあります。自分から探しに行くだけが入口ではありません
- 「大卒以上」の求人は、専門卒でも応募できる場合があります。私は実際に応募できましたし、その条件の求人でオファーも届いていました
- ただし年収と引き換えに、車の運転と、成果を追う働き方がついてきます
「厳しい」と言い切る前に、私の周りで起きたこと
私の周りでは、実際に2人がメーカーへ移りました。2人とも今も続けていて、辞めたという話も、病院に戻ってきたという話も、今のところ聞いていません。
数としては少ないので、これを根拠に「簡単です」と書くつもりはありません。私が責任を持って言えるのは、少なくとも私の周りでは、後悔して戻ってきた人を見ていない、というところまでです。
それでも、身近な2人が続けているという事実は、「厳しいから無理」で終わらせるには少しもったいない情報だと思っています。
「やるなら若いうちに」のほうにも触れておきます。この2人が動いた時期は、片方が3年目以下、もう片方が10年目以上でした。年数でいえば、両端です。
若手が身軽なのは確かでしょう。ただ、10年やってから動いた人も現に続けている。少なくとも「20代を過ぎたら見てもらえない」という単純な話ではなさそうだ、というのが私の実感です。
この記事は統計ではなく、私が見聞きした範囲の話です。同じことが誰にでも起きるとは限りません。判断の材料の1つとして読んでください。
なぜ技師は採用されやすいのか(メーカーの方から聞いた話)
装置の入れ替えで来ていたメーカーの営業の方に、直接聞いたことがあります。返ってきたのは、放射線技師の採用率は高く、実際に転職していく人も多い、という話でした。年収についても、上がる可能性は高いと言われました。
これは私が聞いた話であって、私が数字で確かめたものではありません。会社によって事情は違うので、そのまま鵜呑みにはしないでください。
聞いたあとで、思い当たることがありました。技師は装置の言葉がそのまま通じます。「その構成だと寝台の高さが合わない」「その配置だと導線が詰まる」といった話を、説明されなくても分かる。導入したあとに誰が困るかまで想像できます。
メーカーから見れば、その勘所を最初から持っている人材ということになります。未経験から覚えてもらう部分が、ひとつ減るわけです。
メーカーの人は、技師にとって取引先であると同時に、いちばん近くにいる「業界の内側を知っている人」でもあります。
メーカーと言っても、技師が会っているのは3種類の人
「医療機器メーカーへの転職」とひとくくりに言いますが、技師が現場で顔を合わせている相手は、役割で3つに分かれています。まずここを分けないと、求人票を読んでも自分に合うかが判断できません。
装置を売りに来る人(営業)
病院に提案し、見積もりを出し、導入まで話をまとめる仕事です。技師から見れば、更新の相談で技師長のところに来ている、あの人。
立ち上げで操作を教えに来る人(アプリケーション)
装置が入ったあと、撮影条件の設定や操作の指導をする仕事。技師にとってはいちばん距離が近く、技師出身者も多い職種です。
壊れたときに直しに来る人(サービスエンジニア)
据付から保守、故障対応まで受け持つ仕事です。装置が止まれば検査も止まるので、呼び出しの性質は病院の当直に近い面があります。
この3つは、必要とされる経験も、生活のリズムもまるで違います。職種ごとの募集の多さや年収の目安は放射線技師からの転職先15選に統計値を並べているので、数字で比べたい人はそちらを先に見てください。
私の経歴に、企業から届いたスカウトの中身
転職サービスに経歴を登録していた時期に、企業から直接スカウトが届いたことがあります。会社名は伏せますが、どんな職種から声がかかったのかは書いておきます。
実際に届いたスカウトの職種
- MRI分野の医療機器営業
- 医療機器の卸
- 医療AIのアプリケーション職
共通していたのは、募集の理由がはっきり「医療現場での経験」に置かれていたことです。技師という肩書きが、そのまま声をかける理由になっていました。
もう1つ気づいたことがあります。私は自分でメーカーの求人を探していたわけではありません。経歴を登録しておいたら、向こうから届いた。探しに行く以外に、待つという入口もあるということです。
スカウトは「面接」ではなく「面談」から始まる
届いた文面で意外だったのが、入口の低さでした。どれも共通して、応募する気があるかどうかは今は問わない、まずは情報収集のつもりで話を聞いてほしい、という書き方をしています。
日程も、オンラインか対面かの希望を添えて候補日を2〜3つ返してほしい、という程度。履歴書を持って面接に行く、という形式ではありませんでした。
差出人にも特徴があります。人事の採用担当だけでなく、代表取締役や専務が自分の名前で書いてくる会社もありました。規模の大きくない会社ほど、決める人が最初から出てくる印象です。
求人の条件も、文面の中に書かれていました。担当エリア、想定される残業の目安、募集の背景まで具体的に示されているものもあり、「まず応募してから聞いてください」という求人票とは温度が違います。
ただし、明らかにテンプレートのものも混じっている
全部が丁寧だったわけではありません。1通は、私が経験したことのない職種の実績を前提にした書き出しで始まっていました。文面の中身は送り主のものなので引用はしませんが、要するに私の経歴を読んでいません。
つまり、経歴を細かく読まずに、医療業界というくくりだけで一斉に送っているものが混じっています。そういう文面に本気で悩む必要はありません。自分の経歴に具体的に触れているかどうかで、読む価値のあるものは選り分けられます。
これは私個人に届いた一例です。経歴や時期、住んでいる地域によって届く内容は変わりますし、登録すれば必ず声がかかるわけでもありません。
専門卒の私が、「大卒以上」の求人に応募できた
私は専門学校の卒業です。求人票の応募条件に「大卒以上」と書いてあるのを見つけたら、その時点で読むのをやめていました。自分には関係のない求人だと思っていたからです。
ところが実際には、JACリクルートメントとdodaという2社を通じて、「大卒以上」と書かれた求人に応募させてもらえました。担当者から止められることも、条件を理由に断られることもありませんでした。
国家資格を持っていることが、学歴の条件を補う材料として見てもらえる場合があるようです。ただ、なぜ通ったのかを会社側に確認したわけではないので、「資格があれば学歴条件は関係ない」と言い切ることはできません。
応募できたことと、採用されることは別です。ここは正直に書いておきます。私の場合も、応募できた=内定という話ではありませんでした。
学歴で最初から外していた求人に、実は応募できた。これは自分で動いてみるまで、まったく分かりませんでした。
もし今、応募条件の学歴だけで候補を削っている人がいたら、削る前に一度、エージェントの担当者に聞いてみる価値はあります。聞くだけなら、今の職場を辞める必要はありません。
もうひとつ、あとから確かめたことがあります。届いていたスカウトを開き直して添付の求人を読んだら、応募条件の欄に「大卒以上」と書いてありました。専門卒の私に、その求人でオファーが来ていたわけです。
企業から直接届くスカウトは、向こうが「この人が欲しい」と思って声をかけてくる形です。学歴の条件より先に、経歴のほうを見ている。応募条件は、門前払いの線ではなく目安として置かれている場合があるのだと思います。
もちろん、すべての会社がそうだとは限りません。学歴の条件を厳密に運用する会社もあるはずです。私の場合はそうだった、という一例として読んでください。
では、私はどうなったのか
ここまで読んで「で、お前は移ったのか」と思われたはずなので、先に書いておきます。落ちました。何社か受けて、力が及ばずに落ちたこともあれば、先に別の方が決まって不採用になったこともあります。私は今も病院にいます。
だからこの記事は、成功した人の体験談ではありません。在職したまま外を見に行ったら何が起きたか、という記録です。
ただ、落ちても失ったものはありませんでした。仕事も給料もそのままです。得たものはあって、自分の経歴が外からどう見えているのかが分かった。それだけで、今の職場の見え方が少し変わりました。
年収は上がるのか|「増える」と「安定する」は別の話
メーカーの方からは、上がる可能性が高いと聞きました。実際に移った2人についても、昇給の伸び方がいいという話が届いています。
ただし、必ず上がるとは書けません。メーカーの給与にはインセンティブが含まれることがあり、これは成果に応じて増える仕組みです。固定給が上がるのとは、意味が違います。
良い年は病院時代より増える。そうでない年は、想定していた金額に届かない。振れ幅がある前提で見ておいたほうが、入ってから落ち込まずに済みます。
職種ごとの金額の目安は転職先を15個並べた記事に媒体の集計値をまとめてあります。今の自分の年収がどのあたりなのかは、放射線技師の年収は低い?のほうが早いはずです。
大変そうに見えたところ|運転と、数字
聞いた話のなかで、いちばん現実的だと感じたのが車の運転です。病院の中だけで完結していた仕事が、外に出て回る仕事に変わります。
検査室と操作室を往復する毎日と、担当エリアを車で回る毎日は、体への負担のかかり方がまるで違います。運転そのものが苦手な人には、ここが最初の壁になります。
もう1つがインセンティブです。成果で増えるということは、裏を返せば成果を求められるということ。当直がなくなる募集もありますが、代わりに別の種類の緊張が来ます。
「当直がつらいから」だけで選ぶと危ないところ
- 楽になるのではなく、負担の種類が入れ替わるだけのことがある
- 運転・移動の時間が増え、拘束の総量は減らない場合がある
- 成果が数字で見えるぶん、評価の圧力は病院より直接的になりやすい
当直から離れたいという動機そのものは、まっとうです。それでも、離れた先に何が待っているかは先に見ておいたほうがいい。当直を減らす方法はメーカー転職だけではありません。
とはいえ、これらは面談の場で聞けば答えが返ってくる話です。私が話を聞くならこの5つを確認します。
入る前に確認しておきたい5つ
- 担当エリアの広さと、1日の移動時間。県をまたぐのか、市内で収まるのか
- 車は社用車か、自分の車か。ガソリン代や保険の扱いまで含めて聞く
- 給与に占めるインセンティブの割合。何割が固定給なのかで生活の安定感が変わる
- 評価される期間。月単位で追われるのか、年単位で見てもらえるのか
- 転勤があるか。家族がいる人はここを最初に確認する
どれも、入ってから知ると取り返しがつきにくい項目です。逆に言えば、聞いておけば防げます。面接で条件を聞くと不利になると思われがちですが、聞かずに入ったほうが、あとで双方が困ります。
向いている人と、慎重になったほうがいい人
ここまでの話を、判断しやすい形に並べ直します。当てはまる数を数えるより、引っかかる項目が1つでもあるかを見てください。
| 向いていそうな人 | 慎重に考えたほうがいい人 |
|---|---|
| 装置の話を人に説明するのが苦にならない | 車の運転が苦手、または増やしたくない |
| 成果が評価に直結するほうが納得できる | 毎月同じ額が入る安心感を第一にしたい |
| 病院の外から医療に関わることに興味がある | 患者さんと直接向き合うことが働く理由の中心にある |
| 1つの装置を深く知っている自信がある | 今の職場の不満から離れたいだけで、行き先は決めていない |
右側に丸がついた人は、メーカーが向いていないという意味ではありません。確かめる項目が増えるだけです。運転の頻度も評価の仕組みも、面接で聞けば答えが返ってきます。
何から始めるか|辞める前にできること
いきなり辞めないでください。私は在職したまま情報を集めましたが、それで困ったことはまったくありませんでした。職も給料も持ったまま外を見られます。
動く順番として、私がやってよかったと思うのはこの3つです。
辞めずにできる3つ
- 経歴を登録して、届くものを見る。どんな職種から声がかかるかで、自分の市場での見え方が分かります
- 学歴条件を自分で判断しない。応募できるかどうかは、担当者に聞けば済みます
- 求人を探す場所を変える。技師向けのサービスと、企業の求人が集まる場所は別です
3つ目が見落とされがちです。私が見た範囲では、技師向けのサービスは病院とクリニックの求人が中心でした。探してもメーカーの募集が出てこないのは、自分に縁がないからではなく、見ている棚が違うだけということがあります。
順番としては、まず今の職場に在籍したまま経歴を登録して、届くものを眺めるところからで十分です。届いた求人票を読むうちに、自分が何を嫌だと思っていて、何なら我慢できるのかが見えてきます。先に条件を決めてから探すより、届いたものを見ながら決めるほうが早いこともあります。
私が2つ登録している理由|守りと攻め
私は転職サービスを2つ使っています。同じ「転職サイト」でも、自分の中では役割がはっきり分かれているからです。
守りと攻めで分ける
- 守り=ビズリーチ。プロフィールに書いた経験を見た企業側から、「この人が欲しい」と連絡が来ます。向こうが選んで声をかけてくるので、私の実感では話が前に進みやすい
- 攻め=JACリクルートメント。こちらから動いて、年収を上げにいくために使っています。ミドルからハイクラス向けなので、今より上の提示を狙える
守りだけだと、ずっと待つことになります。攻めだけだと、落ちるたびに削られます。両方あると、片方が止まってももう片方が動いている。私にはこの形がいちばん続けやすいと感じられました。
JACリクルートメントは、年収の高い層を主な対象にしたサービスです(2026年9月時点)。今の条件によっては紹介できる求人が少ないこともあるので、誰にでも合うわけではありません。なお、この記事ではどちらにもリンクを貼っていません。私が使っている、という話として読んでください。
病院やクリニックを見るときのサービスの選び方は放射線技師におすすめの転職サイト比較に、私が実際に登録して分かった範囲でまとめています。企業の求人は、また別の場所です。
まとめ|遠い世界ではなく、毎日会っている人たちの職場
医療機器メーカーは、技師にとって未知の業界ではありません。装置の搬入で、故障の対応で、毎週のように顔を合わせている相手の職場です。
この記事で伝えたかったこと
- メーカーの方いわく、技師の採用率は高い(ただし私が数字で確かめた話ではありません)
- 経歴を登録しておくと、企業側から声がかかることがある
- 「大卒以上」の求人に、専門卒で応募もできたしオファーも届いた。学歴条件で自分から候補を削らない
- 年収の可能性と引き換えに、運転と、成果を求められる働き方が来る
- 移った2人は3年目以下と10年目以上。「若いうちだけ」という単純な話ではなかった
- 私は落ちました。それでも失ったものはなく、外からの自分の見え方が分かった
- 在職のまま情報だけ集められる。辞めてから探す必要はない
メーカー以外にも道はあります。免許が要る職場・要らない職場を並べて比べたい人は、放射線技師からの転職先15選から見てください。
よくある質問
- 専門学校卒でも、医療機器メーカーに応募できますか?
-
私の場合は応募できました。学歴の条件は会社ごとに運用が違うようで、資格や実務の経験のほうを見てもらえることがあります。大事なのは、募集要項の一行だけを見て自分で候補から外さないことです。エージェントの担当者に「この条件で出せますか」と一度聞けば済む話です。
- 自分から応募しなくても、企業から声がかかることはありますか?
-
あります。私のところにも、本文に書いた3つの職種から届きました。ただし届く数も中身も、経歴や時期、住んでいる地域でまったく変わります。何も来ない時期のほうが長いこともあり、届かないからといって自分の値打ちが低いわけではありません。
- メーカーに移れば、当直はなくなりますか?
-
当直という制度そのものは、私が見た募集の中にはありませんでした。ただ、私はメーカーで働いたことがないので、夜間や休日に連絡が来ることがどのくらいあるのかは確かめられていません。とくに装置の保守を受け持つサービスエンジニアは、止まれば検査も止まる立場です(転職先15選の該当箇所に書いています)。泊まりの回数が消える代わりに、呼ばれ方が変わるかもしれない。そのつもりで面談で聞いてください。
- 今の職場に在籍したまま、情報を集めても大丈夫ですか?
-
私は在職のまま活動しましたが、それで困ったことはまったくありませんでした。働きながらなので給料も入り続けます。むしろ、辞めてから探すほうが選択肢を急いで決めることになりがちです。就業規則で副業や競合先の扱いが決まっている職場もあるため、そこだけは自分の規則を先に見ておくと安心です。




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