「放射線技師 きつい」と検索してここへ来たということは、今日もどこかで消耗したのだと思います。ただ、同じ職場の誰かに「きつい」と言っても「どこが?」と返されて、うまく答えられない。そういうことはありませんか。
説明できないのは、あなたの言葉が足りないからではありません。「きつい」という一語が、体のきつさと、頭のきつさという、まったく別のものをまとめて指しているからです。
現役の診療放射線技師(10年目)のアルです。この記事では、①私が10年で一番きつかった検査の中身、②担当してきた9つの検査でしんどさがどう違うか、③そのきつさが検査から来るのか職場から来るのか、の3つを話します。
「きつい」は2種類ある|あなたの根性の問題ではありません
「放射線技師 きつい」で出てくる記事は、たいてい理由が並んでいます。夜勤がある。覚えることが多い。給料が上がらない。どれも本当のことです。
ただ、読み終わっても、自分のしんどさを説明できるようにはなりません。理由が並んでいるだけで、種類が分かれていないからです。
体がきつかった日と、頭がきつかった日は、疲れ方が違います。
ポータブルで一日病棟を回れば、足も腰も重くなります。これは量の話です。こなした分だけたまり、休んだ分だけ返ってきます。
一方、造影のように判断が続く検査は、体をそれほど動かしていなくても消耗します。見て、決めて、また次を見る。この繰り返しは、休んだ時間の長さだけでは戻ってきません。
この2つを分けないまま「自分は体力がないのかも」と結論を出すと、方向を間違えます。体力の問題だと思って走り込みを始めても、頭のきつさは1ミリも減りません。逆に、体がきついだけなら、職場を変えなくても解決することがあります。
だから最初にやるのは、我慢の量を増やすことでも、辞めるかどうかを決めることでもありません。自分のきつさがどちらの種類なのかを、先に見分けることです。
10年やって一番きつかったのは、血管造影のセカンドでした
私はこれまでに、一般撮影、CT、MRI、血管造影(IVR)、超音波、透視、ポータブル、手術室を担当してきました。
その中で一番きつかったのは、血管造影のセカンドです。ドクターの隣に立って補助に入る役割のことで、呼び方は施設によって違います。
何がきついのか。まず、手技によりますが、短いものでも1時間近くは立ち仕事になります。途中で座る場面はありません。長い手技なら、それがさらに延びます。
そして立っている間、頭はずっと動き続けています。ドクターから飛んでくる指示は略語です。それを読み取って、管球を動かすボタンを操作し、寝台を動かす。意味を考えてから手を動かしたのでは、間に合いません。
ここが他の検査と決定的に違うところです。考えることと、手を動かすことが、同時に来ます。
そこに造影が乗ります。ドクターが後ろにいる状態で、一発勝負。撮り直しがきく前提では動けません。この緊張は、検査が終わるまで途切れません。
立っているだけなら、まだ耐えられるんです。きついのは、気を抜ける瞬間が最後まで来ないところですね。
つまりIVRのセカンドは、体と頭が同時に来る、数少ない場面です。そして、この2つが別物だということが、いちばん伝えたいことです。
検査ごとに、きつさの中身はまったく違う【担当した9つを比較】
同じ「放射線技師の仕事」でも、担当する検査が変わると、きつさの中身は入れ替わります。私が実際に担当してきた検査を、9つに分けて並べました。CTは単純と造影で中身がまるで違うので、分けています。
3つ目の軸「自分の腕でコントロールできる余地」は、聞き慣れないかもしれません。検査の進み方を、自分の判断で変えられるかどうかという意味です。ここが後で意味を持ちます。
| 検査 | 体のきつさ | 頭・緊張のきつさ | 自分の腕でコントロールできる余地 |
|---|---|---|---|
| 一般撮影 | 中 | 小〜中 | △(患者が続くと止められない) |
| CT(単純) | 小 | 中 | △ |
| CT(造影) | 小 | 大 | × |
| MRI | 小 | 大 | ○(知識があれば撮像時間を縮められる) |
| 血管造影(IVR)セカンド | 大 | 特大 | × |
| 超音波 | 小 | 大 | △ |
| 透視 | 中 | 小 | ×(術者のペース) |
| ポータブル | 特大 | 小 | △(自分で組めるが、至急や処置後の指示で崩れる) |
| 手術室 | 中 | 小 | ×(ドクターの手技に左右される) |
いちばん右の列の記号は、○=腕次第で変えられる、△=ある程度は変えられる、×=自分では決められない、という意味です。
私は放射線治療、マンモグラフィ、健診バスを担当したことがありません。経験していない検査は、この表から外してあります。ネットには「一番きついのは◯◯」という話が出回っていますが、担当したことのない検査のきつさを、私は語れません。
表で見てほしいのは、自分の担当の行ではありません。いちばん右の列を、縦に読んでください。バツが並ぶ検査ほど、終わったあとに疲れが残ります。
MRIの「頭・緊張」を大にしたのは、撮ること自体が難しいからではありません。MRIは時間がかかるので、予約で回します。そこへ救急の患者さんが予約の枠の間に入ると、後ろがどんどん押していきます。
待たされた患者さんがクレームを入れたり、不機嫌になったりしないように、できるだけ待たせない。この気の使い方が、検査そのものとは別に、ずっと続きます。
だからこそ、いちばん右の列が効いてきます。TRやマトリクス数といった撮影原理を分かっている技師は、適正な範囲で数字をいじって撮像時間を短くします。同じ装置でも担当する人によって終わる時間が変わる。押した予約を取り戻せるかどうかが、腕で変わるということです。
CTの3D画像も同じです。出来上がりの質は、装置ではなく人で変わります。こだわりもレベルも、技師によって違うからです。
逆に、透視は術者のペースで進みます。緊張の度合いはIVRほどではありませんが、いつ終わるかを決めているのは自分ではありません。超音波は体こそ楽ですが、自分が見つけないと検査が終わらないので、頭のほうが削られます。
ここが、きつさの分かれ目になります。自分の腕で進み方を変えられる検査は、慣れるほど楽になります。変えられない検査は、10年やっても楽になりません。
透視やIVRで疲れが抜けないのは、経験が足りないからではなく、ペースを握っているのが自分ではないからです。ここを取り違えて「自分がまだ未熟だから」と抱え込むと、いつまでも終わらない努力をすることになります。
当直帯も、この表で説明がつきます。当直がきついのは時間が長いからではなく、いつ呼ばれるかを自分では決められないからです。表でいえば、いちばん右の列が丸ごとバツになる時間帯だと考えてください。そこに「1人で回す」が重なります。
夜勤・当直そのもののしんどさは夜勤・当直がつらい放射線技師へ|負担を減らす3つの道で別に書きました。
正直に言うと、ポータブルは体がきついのに私は一番楽でした
ネット上では、ポータブルが一番きついという声をよく見かけます。装置を押して病棟を回り続ける。汗だくになる。件数が多い。体の話としては、そのとおりです。私も楽な検査だとは思いません。
それでも、私が一番気が楽だと感じていたのはポータブルでした。理由ははっきりしています。IVRやCTの造影のように、考えることが少ないからです。
ここに、この記事の結論があります。体のきつさは「量」の問題で、頭のきつさは「読み取って判断し続けること」の問題です。種類が違うので、片方が大きいからといって、もう片方も大きいとは限りません。
ポータブルなら自分のペースで回れる、という話でもありません。処置後の撮影や至急の依頼がドクターから入れば、組んだ順番はあっさり崩れます。それでも負担が軽いのは、順番を握れるからではなく、判断すべきことが少ないからです。
だから「ポータブルがきつい」と言う人と「ポータブルは楽だ」と言う私は、どちらも嘘をついていません。見ている軸が違うだけです。
自分がどっちの軸でしんどいのか。それが分かるだけで、次に何をすればいいかが変わってきます。
見分け方は難しくありません。3つ書き出すだけです。
直近の1週間で「今日はきつかった」と思った日を挙げて、その日に担当していた検査を書きます。
寝たら戻っていたなら、それは体のきつさです。翌朝も残っていたなら、頭のきつさです。ここで種類が分かれます。
その検査がバツなら、慣れでは減りません。減らす方法は、担当を変えるか、回し方を変えるかのどちらかになります。
種類が分かれると、人に言えるようになります。「きついです」ではなく「◯◯の検査で、終わったあとも判断を引きずるのがきついです」と、種類で伝える。人数はすぐには増えませんが、担当の割り振りなら、相談できることがあります。
体はきついのに気持ちは平気、という状態なら、そこまで危ない場所にはいません。体は動いていないのに家に帰ってからも検査のことを考えている。そちらのほうを先に手当てしてください。
技師は1病院あたり平均5.8人。1人で回す時間ができる理由
ここまでは検査の話でした。もうひとつ、検査の種類と関係なくきつさを作っているものがあります。人数です。
厚生労働省の医療施設調査(令和5年10月1日時点)では、100床あたりの診療放射線技師はフルタイム換算(常勤に直した人数)で3.3人でした。200床の病院なら、7人弱ということになります。
同じ表で、看護師は100床あたり57.5人、医師は18.1人です。技師は看護師のおよそ17分の1しかいません。
数字で見る、技師の人数
- 病院で働く診療放射線技師:46,794.6人(フルタイム換算)
- 全国の病院:8,122施設
- 1病院あたり、平均5.8人
出典:厚生労働省「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」表25・表26・表1(令和5年10月1日現在)
平均5.8人です。この人数で、日勤も当直も休みも回します。1人で回す時間帯ができるのは、誰かの怠慢ではなく算数の結果です。
誰かが休めば、その分はほかの誰かに寄ります。急な休みが取りにくいのも、当番が回ってくる間隔が短いのも、5.8人という母数から出てくる話です。もちろんこれは全国の平均で、大学病院も小さな病院も混ざっています。あなたの職場がこれを下回っているなら、しんどさは気のせいではなく人数の問題です。
私自身、1人で回す時間帯があります。そこでいちばんこたえるのは、撮影の全責任が自分に来ることです。判断を代わってくれる人がいません。迷ったときに「これでいいと思う?」と聞ける相手が、その時間だけいなくなります。
ここで数字をひとつ出します。先に言っておくと、これはあなたのつらさを否定する材料ではなく、それが周りに伝わらない理由のほうです。
同じ国の統計で、診療放射線技師の残業は月10時間前後です(賃金構造基本統計調査・令和5年6月分。男性10時間、女性7時間)。「そんなに短いはずがない」と思ったなら、その感覚は間違っていません。ただ数字の上では、技師はそれほど長く残っていないことになっているのです。
厚生労働省の別の調査では、診療放射線技師が時間外に働く理由でもっとも多いのは「緊急対応」でした。
そして「時間外労働を減らしたい」と答えた診療放射線技師は約30%です。理学療法士や作業療法士などのリハビリ職では55.1%でした(厚生労働省「医療関係職種を取り巻く現状について」/元データは令和6年度 医療機関における勤務環境に関する実態調査・令和6年10〜12月調査)。
ここでも出てくるのは、長さではなく、読めないことのほうです。その中身は、呼ばれるかどうか分からない時間の話とつながります。詳しくは放射線技師のオンコールがしんどいに書きました。
ひとつ、はっきり書いておきます。放射線技師の離職率を示す公的な統計は、日本には存在しません。看護師と違って就業の届出義務がなく、集計する土台がないからです。ネットで見かける「15〜18%」といった数字に、たどれる出典は見つかりませんでした。自分の判断材料にはしないでください。
私がまだ辞めていない理由は、生活していくためです
ここまで読んで、「で、この人は辞めろと言いたいのか」と思われたかもしれません。違います。
私がまだ辞めていない理由は、生活していくためです。
やりがいとか、患者さんのためとか、そういう話をここに足すつもりはありません。足した瞬間に、ここまで書いてきたことが全部きれいごとになります。
生活のために続けている。それは、続ける理由として十分だと思っています。
そのうえで、止まっているわけでもありません。自分が働きやすくなるように、できる範囲の改善は心がけています。並行して転職活動もしています。
ただ、今より環境の良いところへ行きたいと動いてはいますが、まだご縁がなくて決まっていません。これが、私が変えられずにいることです。
安定や国家資格の強みまで含めた損得の話は、放射線技師はやめとけと言われる理由のほうに書きました。ここでは、日々のきつさの中身に絞ります。
きついのは「検査そのもの」か「その職場の回し方」か
そのうえで、ひとつだけ仕分けておくと、あとが楽になります。あなたのきつさは、検査そのものから来ているのか、その職場の回し方から来ているのか。
検査から来るものは、IVRのセカンドの緊張、造影で失敗が許されないこと、超音波で自分が見つけないと終わらないこと。これはどこの病院へ行っても、その検査を担当する限りついてきます。
職場の回し方から来るものは、1人になる時間帯、当直の頻度、技師の人数、出来のばらつき。こちらは職場が変われば変わります。
この2つを混ぜたまま考えると、「転職しても同じかもしれない」と「ここにいたらずっとこのままだ」を行ったり来たりして、決まりません。もう一段大きい「職場が嫌なのか、この仕事自体が嫌なのか」という判定は、放射線技師を辞めたいあなたへに判定表を置いてあります。
職場の回し方が原因だったとき、次の職場を見る物差しは4つです。
- 担当できる検査の種類がいくつあるか
- 技師が何人いるか
- 1人で回す時間帯があるか
- 昇給率
1つ目は、頭のきつさの中身が決まるところです。2つ目と3つ目は、先ほどの5.8人の話が、そのまま当てはまります。人数が少ないほど、1人で全責任を負う時間が長くなります。
4つ目の昇給率は、面接で聞きにくいところですが、いちばん後から効いてきます。初任給が同じでも、上がり方が違えば10年で差がつきます。
後輩に聞かれたとき、私が実際に言うのは昇給率と、モダリティの多いところを選べの2つです。残りの2つは、この記事で見てきた人数と1人になる時間帯を足したものになります。
とくに将来どこかへ動くことを考えているなら、モダリティの多いところを選んだほうがいい。担当できる検査が増えるほど、次に動くときの持ち札が増えるからです。
ただし、逆のことも書いておきます。モダリティが多い病院は、IVRも造影も当直も増えます。経験は増えますが、この記事でいう「頭のきつさ」も一緒に増える。経験を取るか、日々の軽さを取るか。ここは選ぶしかありません。
昇給率については放射線技師の年収は低い?で詳しく書きました。求人の見方をまだ知らないなら、放射線技師の転職サイトはどれがいい?にまとめてあります。いま動く必要はありません。物差しだけ持っておけば十分です。
よくある質問
- きついと感じたら、転職したほうがいいですか?
-
すぐには勧めません。私自身、続けている理由は生活していくためです。ただ、きつさが職場の回し方から来ているなら、次の職場の見方は知っておいて損はありません。担当できる検査の種類、技師の人数、1人で回す時間帯、昇給率。この4つを持つだけでも求人の見え方は変わります。急いで動く必要はありません。
- 放射線技師の離職率はどのくらいですか?
-
診療放射線技師の離職率を示す公的な統計は、日本にはありません。看護師のような就業の届出義務がなく、集計の土台がないためです。ネットで見かける数字は出典をたどれないものが多いので、判断材料にしないほうが安全です。
- 担当したことのない検査に配属されたら、どうすればいいですか?
-
最初のうちは、体より頭のほうがきつくなります。手が動かないのではなく、判断が追いつかないからです。同じ検査を繰り返すうちに減っていく種類のきつさなので、覚えが悪いと決めつけないでください。
- 体力に自信がなくても、放射線技師は続けられますか?
-
検査によります。ポータブルのように体を使うものもあれば、MRIや超音波のように体の負担が小さいものもあります。体のきつさと頭のきつさは別物なので、体力だけで向き不向きを決めないでください。
まとめ|きつさは2種類。分けたところから道が変わる
放射線技師の「きつい」は一語ですが、中身は体のきつさと頭のきつさの2つです。ここを分けないと、対策の方向を間違えます。
私が10年で一番きつかったのは血管造影のセカンドでした。1時間近く立ちっぱなしで、略語の指示を読み取りながら管球と寝台を動かし、造影はやり直しがききません。体と頭が同時に来る場面です。
逆にポータブルは体がきついのに、私は気が楽でした。考えることが少ないからです。同じ人間でも、見る軸が違えば評価は逆になります。
人数は1病院あたり平均5.8人。1人で回す時間ができるのは、あなたの職場だけの話ではありません。
最後にひとつだけ。そのきつさが検査から来るのか、職場の回し方から来るのかを仕分けてください。前者はどこへ行ってもついてきます。後者は変えられます。









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