撮り直しをお願いしたときの、患者さんの表情が頭から離れない。仕事は終わったのに、家に帰ってからも同じ場面が何度も再生される。撮影ミスのあとに来るあの重さは、経験した人にしか分かりません。
先に言っておきます。ミスの記憶は、無理に消さなくていいです。落ち込みを今日中に消す方法はありませんが、次に同じ場面が来たときの動き方は、今日決められます。
現役の診療放射線技師(10年目)のアルです。私も撮り直しになったことがあり、あのときの申し訳なさは今でも思い出せます。この記事でわかるのは、①撮影ミスがここまで刺さる理由 ②落ち込みとの付き合い方 ③同じミスを防ぐために私が続けている習慣、の3つです。
撮影ミスが、ここまで刺さる理由
放射線技師のミスは、事務作業の入力ミスとは性質が違います。撮り直しになれば、患者さんにもう一度お願いすることになります。その瞬間、相手と正面から向き合わなければいけません。
自分の中だけで処理して、あとから静かに直す、ということができない。ミスがそのまま目の前の人の時間と負担に変わります。だから技術的な失敗以上に、気持ちに残ります。
落ち込むのは、あなたが弱いからではありません。相手の顔が見える仕事をしている以上、当たり前の反応です。
私が一番こたえたのは、技術のことではなかった
撮り直しになったとき、真っ先に頭を占めたのは「なぜ間違えたのか」ではありませんでした。患者さんへの申し訳なさでした。もう一度お願いしますと言った時の、あの空気です。
もう一つは、周りの目でした。放射線科は人数が限られた狭い世界です。誰かに強く責められなくても、失敗はすぐに知れ渡ります。次の日、いつも通りに接してもらえても、自分だけが意識してしまう。
正直に言うと、技術的なミスそのものより、患者さんに申し訳ないのと、周りの目のほうがこたえました。誰も責めてこなくても、自分の中で勝手に責め続けてしまうんですよね。あの感覚は、たぶん多くの技師が経験しています。
落ち込みは、無理に消さなくていい
ミスをした日に読むと、たいてい「気持ちを切り替えよう」と書いてあります。ただ、切り替えられるならとっくにしています。
私の場合は時間が解決しました。何か特別なことをして立ち直ったわけではありません。数日経ち、通常の業務をこなしているうちに、少しずつ薄まっていきました。
だから、その日のうちに元通りになろうとしなくて大丈夫です。落ち込んでいる状態は、時間のほうが引き受けてくれます。今日やるべきなのは、無理に元気になることではありません。
ただし「時間任せ」だけだと、同じ場所で転ぶ
時間で楽になるのは、気持ちのほうだけです。ミスが起きた原因は、放っておいても消えません。気持ちの回復と、再発防止は、分けて考えます。
| 気持ち(落ち込み) | 原因(再発防止) | |
|---|---|---|
| どうする | 無理に消さない | その日のうちに1つだけ決める |
| 効くもの | 時間 | 手順と確認の習慣 |
| やりがちな失敗 | 今日中に立ち直ろうとする | 反省だけして対策を決めない |
反省と対策は違います。「気をつけます」で終わると、同じ場面でまた同じ判断をします。
私が今も続けている、たった1つの習慣
あれ以来、私が続けていることは一つだけです。撮影オーダー(撮影の指示)に少しでも疑問を感じたら、その場でオーダーした医師か上司に確認する。これだけです。
撮り直しの多くは、技術が足りないから起きるのではありません。「たぶんこういうことだろう」と、確認しないまま進めたときに起きます。違和感を持った瞬間が、いつも分かれ道でした。
- 疑問を感じた時点で止める:撮ってから確認するのでは遅い。手を動かす前が唯一のタイミング
- 聞く相手を決めておく:オーダーした医師、いなければ上司。迷う時間をなくす
- 聞くことをためらわない:確認して手間をかけるほうが、撮り直しでかける手間よりずっと軽い
確認は、あなたを守る記録にもなる
疑問点を口に出して確認しておくと、判断の理由が自分の中にも相手の中にも残ります。何も聞かずに進めて後から問題になったときと、確認したうえで進めたときとでは、その後の話し合いがまったく変わります。
ミスをした日のうちに、やっておくこと
落ち込みは時間に任せる。そのかわり、対策だけはその日のうちに残しておきます。日にちが経ったあと、何も残っていないのが一番もったいないからです。
何が起きたかを、感情を混ぜずに短く書く。「情けない」ではなく「指示の部位を思い込みで判断した」と書く。
どこで違う選択ができたかを1つに絞る。原因を並べすぎると、結局どれも実行しない。
同じ場面が来たときにやることを1つだけ決める。「疑問があれば撮る前に聞く」で十分。
ノートでもスマホのメモでも構いません。気持ちが落ち着いたころ、対策だけが手元に残っている。その状態をつくります。
それでも気持ちが戻らないときに、疑ってほしいこと
何週間も引きずる、仕事に行くのが怖い。そこまで長引くときは、ミスそのものだけが原因ではないかもしれません。
たとえば、慢性的に疲れている状態では、気持ちの立て直しにも時間がかかります。夜勤や当直で睡眠が細切れになっているなら、回復しづらい体の状態のまま、気持ちだけ立て直そうとしていることになります。夜勤の負担そのものを減らす方法は夜勤・当直がつらい放射線技師へ|負担を減らす3つの道にまとめました。
また、ミスのたびに強く責められ、萎縮して確認すらできない。そんな状態なら、個人の問題ではなく職場の環境の問題です。環境が変わらないまま我慢を続けると、判断が鈍って次のミスを呼びます。
この状態が続くときは、早めに相談を
眠れない、食べられない、朝に体が動かないといった状態が続いているなら、我慢を続けないでください。産業医や外部の相談窓口など、職場の外に相談先を持っておくと安心です。ミスの反省とは切り離して、体調を優先してください。
よくある質問
- ミスをして怒られました。この仕事に向いていないのでしょうか?
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一度のミスで向き不向きは決まりません。怒られた事実と、適性があるかどうかは別の話です。ただ、何度も同じ場面でつまずいて苦しいなら、働き方を考え直すきっかけにはなります。判断材料は放射線技師に向いてない人の特徴と、辞める以外の選択肢にまとめています。
- 撮り直しを患者さんにどう伝えればいいですか?
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言い訳を並べるより、もう一度お願いすることと、その理由を簡潔に伝えて謝るほうが伝わります。専門的な理由を細かく説明されても、患者さんには判断できません。誠実な態度そのものが伝わります。
- 何日も引きずってしまいます。おかしいでしょうか?
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おかしくありません。人の体に関わる仕事である以上、簡単に割り切れないのは自然なことです。ただし、眠れない・食べられないといった状態が続く場合は、気持ちの問題として片づけず、早めに相談先を持ってください。
- ミスを完全になくす方法はありますか?
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ありません。人が関わる以上、確率をゼロにはできません。目指すのは「二度と間違えないこと」ではなく、同じ原因で繰り返さないことです。確認の手順を1つずつ増やすほうが、精神論よりずっと確実に減ります。
まとめ|ミスは消せないが、繰り返さない形にはできる
ミスは誰にでもあります。完全に防ぐことはできません。だからこそ、落ち込んで終わりにせず、次に同じミスを起こさないための改善を1つ決めることが大切なんです。そこまでやれば、その失敗はもう無駄になりません。
- 撮影ミスが刺さるのは当然。撮り直しは相手と向き合う形で表に出るぶん、気持ちに残る
- 落ち込みは無理に消さない。回復は時間に任せていい。今日中に立ち直ろうとしなくていい
- 気持ちと原因は分けて扱う。時間に任せるのは気持ちだけ。原因はその日のうちに1つ決める
- 続けている習慣は1つだけ:オーダーに疑問があれば、撮る前に医師か上司へ確認する
- 長引くときは働き方も疑う。疲労や職場の空気が回復を妨げていることがある
一度のミスで、あなたのこれまでが否定されるわけではありません。落ち込んだ分だけ、次に確認する手が増えます。それはもう、ミスではなく経験になっています。
ミスをきっかけに「この仕事を続けられるのか」とまで感じているなら、放射線技師を辞めたいあなたへ|1年目・3年目・10年目で「答え」は違いますもあわせて読んでみてください。まだ1〜2年目なら、放射線技師の新人が「辞めたい」と思ったら|待てば消える悩みと消えない悩みのほうが近い話かもしれません。








